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CEA/DACM は、高強度リニアックやインジェクタの設計・ビームダイナミクス解析に特化した加速器シミュレーションソフトウェアです。

CEA DACM Software

商品コード:
1001269501~1001269505

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メーカー:
CEA-Saclay
JANコード:
10001332
関連カテゴリ:
マルチメディア > 3D・CAD
ビジネス&学習 > データ解析

【ライセンス種類】

TraceWin Toutatis RFQ Designer GenDTL GenLinWin
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サマリー

製品概要と価値提案

CEA/DACM ソフトウェアは、高強度リニアックやインジェクタのための加速器およびビーム輸送系の設計・シミュレーションに特化したコード群であり、フランス CEA Saclay の加速器部門で開発されています。 イオン源の引き出し部からターゲットまで、全エネルギー領域にわたって現実的なビームダイナミクス計算を支援し、概念設計から検証済みレイアウトへと、ハードウェア試作回数を抑えながら進めることができます。

商用ポートフォリオの中心は、TraceWin、Toutatis、RFQ Designer、GenDTL、GenLinWin の 5 つのライセンス製品であり、これに無償ユーティリティである Beta と PlotWin が補完的なツールとして加わります。 この組み合わせにより、研究所や大規模加速器施設だけでなく、産業用リニアックや RFQ メーカーにとっても、エンドツーエンドのモデリング環境として魅力的なスイートになっています。

  • TraceWin は、イオンおよび電子を対象に 2D/3D の線形・非線形ビームダイナミクスを計算し、高速なエンベロープ計算とマクロ粒子追跡を組み合わせるとともに、他の DACM コードのグラフィカルシェルとして機能します。
  • Toutatis は、高強度 RFQ ビーム輸送に特化した 3 次元 PIC コードであり、ポアソン方程式とマルチグリッド加速を用いて自己無撞着場を解きます。
  • RFQ Designer は、RFQ の性能目標を多パラメータ最適化により詳細な RFQ ジオメトリへと落とし込む設計支援ツールです。
  • GenDTLGenLinWin は、Alvarez 型 DTL セクションや超伝導/常伝導リニアックセクションを生成・最適化し、TraceWin と互換性のあるラティスファイルと豊富な診断情報を出力します。
  • BetaPlotWin は、2 次までのビーム光学設計から詳細な位相空間分布やエミッタンスの可視化までをカバーする補助ツールです。

一般的な多目的シミュレータや自社開発コードと比較すると、DACM ソフトウェアは加速器物理に特化している点が特徴です。 RFQ モデリング、スタート・ツー・エンドのビーム輸送、エラー解析やモンテカルロスタディなど、高強度リニアック向けの機能が標準で備わっており、 IFMIF、LINAC4、SPIRAL2、EUROTRANS、EURISOL、SPL といったプロジェクトでの実績にもとづくワークフローが整備されています。 さらに、専用ユーザフォーラムと継続的なリリースにより、保守や現場での実績に対する安心感を提供します。

情報システム・技術管理の観点からも、研究・商用向けのユーザ単位ライセンス、コンパクトなデスクトップ実行環境、一部コードで利用可能なリモート計算アーキテクチャなど、 導入範囲が明確で、既存クラスターへの統合も行いやすい構成になっています。

詳細版

製品概要と価値提案

現代のリニアックやインジェクタチェーンは、RF、マグネット、ビーム診断、真空、制御、安全、運転など、多くの分野が限られた設置スペースの中で密接に関わり合うシステムです。 ビーム電流やデューティサイクルが増加するにつれ、解析的な見積もりや低精度モデルだけに頼ることは難しくなり、 高品質な数値シミュレーションツールが、設計・アップグレード検討・トラブルシューティングの中心的役割を担うようになっています。

CEA/DACM ソフトウェアは、このニーズに直接応える形で開発されました。 CEA Saclay の加速器部門で生まれたこれらのコードは、IFMIF、LINAC4、SPIRAL2、EUROTRANS、EURISOL、SPL などの高出力プロジェクトにおいて、 イオン源引き出し部から高エネルギータ―ゲットまでのスタート・ツー・エンドのビームダイナミクス解析に広く用いられてきました。 その結果として、以下を実現するコンパクトかつ完成度の高いエコシステムが形成されています。

  • RFQ、DTL、リニアックセクションの設計
  • ラティスパラメータや空洞電場の最適化
  • 集団効果、空間電荷、エラーシナリオのシミュレーション
  • 位相空間の変化やエミッタンス成長の可視化
  • ハードウェア製作前に信頼性の高い設計を準備

技術マネージャーの観点では、価値提案は次のようにまとめられます。

  • 技術リスクの低減:調達・設置前に、現実的なシミュレーションで設計判断を検証可能。
  • 設計サイクルの短縮:組み込みモデルや GUI により、研究者・エンジニアは低レベルなコーディングではなくビーム物理に集中できる。
  • トレーサビリティとコンプライアンス:シミュレーション結果、設定ファイル、最適化履歴を、プロジェクト文書と一緒にアーカイブ可能。
  • コスト管理:ハードウェア上の試行錯誤をソフトウェア側へシフトすることで、手戻りコストやスケジュール遅延を抑制。

情報システムの観点からは、次のような点が魅力です。

  • 実行ファイルやデータ形式が整理されたコンパクトなスイート構成
  • トラブルシューティングや新バージョン情報を得られる専用ユーザフォーラムの存在
  • 科学技術向けの標準的なデスクトップ環境を前提とした設計であり、コードによりプラットフォーム選択肢が明記されていること

複数のモデリングツールを比較検討する組織にとって、DACM ソフトウェアは、汎用ソルバと大規模な自社開発フレームワークの中間に位置付けられます。 一般的な多目的プラットフォームよりも加速器向け機能が深く、同時に、フルスクラッチ開発に比べて開発・保守負荷を大幅に軽減できます。

製品紹介

DACM ソフトウェアスイートの概要

DACM スイートは、一般的な電磁場解析や構造解析ではなく、加速器設計とビーム輸送シミュレーションに明確にフォーカスしたソフトウェア群です。 公式の概要では「加速器設計とシミュレーションのためのソフトウェア」と位置付けられており、 複数のコードがイオン源からターゲットまでの全チェーンをカバーし、高強度リニアック設計における数値計算の重要性が強調されています。

主な構成要素は以下のとおりです。

  • 輸送・ビームダイナミクスコード
    TraceWin
    Toutatis
    Beta(無償)
  • ジェネレータ・共振器設計コード
    RFQ Designer
    GenDTL
    GenLinWin
  • 可視化コード
    PlotWin(無償)

2009 年以降、多くのコードがシェアウェアとして提供されており、Beta と PlotWin は現在も開発元から無償配布されています。 調達の観点では、TraceWin、Toutatis、RFQ Designer、GenDTL、GenLinWin の 5 製品がライセンスの中心となり、 Beta と PlotWin は直接収益を生まない補助ツールとして、導入価値を高めています。

スイート全体は、次のような連携を前提に設計されています。

  • GenDTL と GenLinWin で生成したラティスは、TraceWin の 「.dat」 形式で出力され、そのままインポート可能。
  • TraceWin は、Toutatis やその他のトラッキングコードのグラフィカルフロントエンドとして機能し、 エンベロープモデル、マクロ粒子追跡、PIC 計算をシームレスに切り替え可能。
  • PlotWin は、TraceWin と Toutatis が出力する 「.dat」 および 「.plt」 ファイルを読み込み、 各コード側でプロット機能を再実装することなく、専用の可視化機能を提供。

このモジュール性は、バラバラなツールをつなぎ合わせる一般的な環境と大きく異なる点です。 DACM スイートでは、加速器プロジェクトで頻出する物理問題を軸にワークフローが設計されており、データ形式もスイート全体で統一されています。

販売代理店の視点からは、例えば以下のような一貫性のあるソリューションバンドルとして提案しやすくなります。

  • 「RFQ パッケージ」:Toutatis + RFQ Designer + TraceWin + PlotWin
  • 「リニアック最適化パッケージ」:TraceWin + GenDTL + GenLinWin + PlotWin + Beta

TraceWin – 包括的なビームダイナミクスシミュレーション

スイート内での役割

TraceWin は DACM ファミリーの中核となるコードであり、 線形加速器やビーム輸送ラインにおけるイオンおよび電子ビームのダイナミクスを計算します。 2 次元・3 次元の線形・非線形効果を扱うことができ、エンベロープ計算とマクロ粒子追跡を組み合わせた解析が可能です。

加速器物理の担当者にとっては、次のような機能を提供します。

  • パラメータスキャンを高速に行うためのエンベロープ計算
  • 詳細な位相空間解析のためのマクロ粒子追跡
  • 1D/2D/3D の静的・動的電場マップを含む多様なフィールドマップ形式への対応
  • Toutatis などの外部 RFQ モジュールおよびフィールドマップの直接利用

意思決定者にとっては、IFMIF、LINAC4、SPIRAL2、EUROTRANS、EURISOL、SPL などの大規模プロジェクトで広く用いられ、 GSI の UNILAC での実験とも比較検証されてきたコードベースを、 概念設計からコミッショニングまで継続的に利用できる点が安心材料となります。

主な機能(公式ドキュメントの要約)

  • スタート・ツー・エンドシミュレーション: イオン源からターゲットまでを 1 つの環境でモデル化し、RFQ、DTL、高エネルギーリニアックセクションを一貫して取り扱い可能。
  • エンベロープ+マクロ粒子追跡: 設計空間の探索にはエンベロープモデルを用い、ラティス記述を変更せずに、そのままマクロ粒子シミュレーションへ切り替えて詳細評価を実施可能。
  • ビームマッチングとチューニング: Twiss パラメータのマッチング、空洞振幅・位相のチューニング、マシン全体の位相進み則の設定など、ラティス最適化を加速する機能を搭載。
  • エラー・感度解析: 要素のミスアライメントや電場誤差などの許容誤差をモンテカルロ手法で統計的に評価し、ビームロス位置や透過率の統計を自動抽出。
  • リモート・並列計算: 内蔵のクライアント/サーバーアーキテクチャにより、異種混在マシン上で多数のシミュレーションを一括実行し、既存クラスターの活用を容易にする仕組みを提供。
  • マルチプラットフォーム対応: TraceWin については Windows、Linux、macOS 版が明記されており、混在環境への展開がしやすい構成になっています。

競合ツールとの違い(一般論)

線形光学のみに主眼を置いた一般的なビーム光学ツールと異なり、 TraceWin は高電流に伴う空間電荷効果や RFQ 輸送、非線形トラッキングを、1 つの GUI の中に統合しています。 これにより、複数コードや自作コンバータを切り替えながらスタディを進める必要性が減り、 とくに RFQ 出力を下流リニアックへスムーズにマッチングするスタート・ツー・エンド解析で大きなメリットがあります。

また、スクリプト操作のみを前提とするツールが多い中で、TraceWin は以下のような点でも差別化されています。

  • ラティス構築・編集のためのインタラクティブな GUI
  • ビルトインのプロット・診断機能
  • エンベロープモデルとマクロ粒子モデルの透過的な切り替え

熟練の加速器物理研究者と、より広い工学スタッフが混在するプロジェクトチームにおいて、 GUI とスクリプトの両方を使える環境は立ち上がり時間の短縮に貢献します。

Toutatis – RFQ ビーム輸送向け PIC シミュレーション

Toutatis は、高強度イオンビームの RFQ 構造を対象とした 3 次元粒子-セル(PIC)コードです。 粒子運動と自己無撞着電場を同時に扱い、有限差分とマルチグリッドソルバによってポアソン方程式を解き、 RFQ ベーン形状は不規則境界ノードとしてメッシュに直接埋め込まれます。

ユーザにとっての意味

  • 空間電荷効果の高精度モデリング: 高電流 RFQ では集団効果が支配的となりますが、PIC 手法によりエミッタンス成長やハロー形成、損失メカニズムをエンベロープモデルよりも現実的に再現可能です。
  • 現実的なジオメトリ表現: 3 次元のベーンジオメトリをメッシュに直接埋め込むことで、機械設計上の選択や RF 電場分布がビーム品質に与える影響を詳細に評価できます。
  • TraceWin とのシームレスな連携: 実運用では、ラティス構成や結果可視化を TraceWin 側で行い、Toutatis をその一部として呼び出すケースが一般的です。 ユーザはファイルフォーマットのやり取りではなく物理内容の解釈に集中できます。

代表的なワークフロー

  • RFQ Designer による RFQ 事前設計 → Toutatis による高精度ビームダイナミクス検証 → 下流 TraceWin シミュレーション用のビーム分布出力。
  • ベーンのミスアライメントや RF 誤差に対する感度解析を行い、機械許容差や RF 制御要件にフィードバック。
  • 透過率、エミッタンス、エネルギー分布などのコミッショニング測定値と比較し、設計~実機までのチェーン全体を検証。

Toutatis をバンドルの一部として提供することで、RFQ 共振器設計と PIC ビームダイナミクス解析を単一の調達パッケージ内で完結させることができます。

RFQ Designer – RFQ 共振器の合成と最適化

RFQ Designer は、システムレベルの要求を整合した RFQ 共振器ジオメトリへと落とし込むための設計支援ツールです。 複数の重要パラメータを定義し、重み付き目的関数にもとづく多変量最小化を行うことで、ユーザの制約条件に合致した RFQ 記述ファイルを生成します。

主な機能

  • 制約駆動型設計: ビーム電流、エミッタンス、入出力エネルギー、RF 周波数、物理的制約などを指定すると、 ツールがジオメトリパラメータを調整して目標を満たす設計案を提示します。
  • 重み付き目的関数: 透過率、エミッタンス成長、RFQ 長、電場上限などを単一のコスト関数にまとめ、 プロジェクトの優先度(損失最小化、装置のコンパクト化など)に応じて重み付けを調整可能。
  • ファイル出力: 生成された RFQ 共振器ファイルは、Toutatis などの下流ビームダイナミクスコードと組み合わせて利用でき、 DACM スイート内で一貫したモデリングチェーンを構成します。

意思決定者にとってのメリット

  • ソフトウェア上での設計反復: RFQ ジオメトリを早期に固定してから問題が発覚するのではなく、 RFQ Designer と Toutatis を用いてソフトウェア上で迅速に反復し、 機械設計に入る前に堅牢な構成に収束させることができます。
  • 体系的な最適化: コスト関数にもとづく最適化は、試行錯誤的な手動チューニングに比べて設計レビュー時の説明性が高く、 安全性・性能委員会向けのトレーサビリティ向上にもつながります。

GenDTL – Alvarez 型 DTL セクションジェネレータ

GenDTL は、Alvarez 構造にもとづくドリフトチューブリニアック(DTL)セクションの設計に特化したツールです。 周波数、粒子種、エネルギー範囲、ビーム電流、ドリフトチューブ形状、必要に応じて四重極パラメータなどを入力とし、 各タンクの電場振幅・位相則を調整します。

主な技術的特徴

  • 入力駆動型ラティス生成: 周波数、電荷/質量比、入出力エネルギー、電流といった基本仕様を入力すると、 GenDTL がドリフトチューブ長、ギャップ、フォーカシング構造などを、指定された制約条件内で自動的に設計します。
  • 制約付き最適化: 最大電場、タンクあたりの最大電力、周期ごとの位相進み上限などの制約を設定し、 それらを満たす解を探索することができます。
  • 電場計算の組み込み: SUPERFISH で計算された電磁界を利用し、生成粒子を Runge–Kutta 法で追跡することで性能を評価します。
  • TraceWin との相互運用: 生成されたリニアックは TraceWin の「.dat」 形式で出力され、そのまま多粒子シミュレーションやエラー解析に利用できます。

現行バージョンは Win32 アプリケーションとして提供されていますが、 Windows 版 SUPERFISH をインストールした環境では Linux 上の Wine からも安定して動作しているとの報告があります。 Linux ワークステーションを標準とする IT 部門にとって有用な情報です。

差別化のポイント

電場分布のみに焦点を当てるツールや、縦方向ダイナミクスのみに特化した一般的な DTL 計算ツールとは異なり、 GenDTL は電場制約、粒子追跡、下流多粒子コードへのエクスポートを 1 つのツール内で完結させます。 これにより、ファイルの手作業変換や連携ミスを減らし、DTL 設計プロセスの一貫性を高めることができます。

GenLinWin – 空洞アレイによるリニアックセクションジェネレータ

GenLinWin は、空洞アレイを用いたリニアックセクションの生成・最適化を行うツールです。 同期粒子追跡にもとづいて電場・位相則を定義し、1 モードまたは 2 モードの空洞を扱うことができます。 最大電場、空洞あたり最大電力、周期ごとの位相進みなどの制約下で最適化を行い、 セクション間の遷移においてはアクセプタンスや単位長さあたりの位相進みの連続性を考慮できます。

主な機能

  • 空洞アレイ設計: 独立位相制御可能な空洞列を用いる超伝導/常伝導リニアックに適しており、 チェーン内の各空洞振幅・位相を調整するためのツールを提供します。
  • 制約ベースの最適化: GenDTL と同様の考え方で、RF 電力や勾配、光学的制約を守りながら設計することができますが、 対象がタンク単位ではなく空洞単位である点が異なります。
  • TraceWin 形式の出力: 生成されたリニアックは TraceWin 形式で記述されるため、 ジェネレータ段階の検討から多粒子シミュレーションへの移行が容易です。

アップグレードや新しいリニアックセクションを検討する多くの組織にとって、 GenLinWin は、スプレッドシート等による解析と本格的な多粒子シミュレーションの中間に位置するツールです。 最適化のシーケンスをスクリプトとして構築することで、堅牢なベースラインの作成や、 代替光学構成の体系的な比較が可能になります。

Beta – ビーム光学コード(無償)

Beta は Karl L. Brown 形式にもとづくビーム光学コードであり、 加速器やビーム輸送ラインの設計・ラティスパラメータ最適化に主に利用されます。 伝達マトリクスの 2 次までを用いて光学要素をモデル化し、高次要素は薄レンズとして扱うことができます。

代表的な用途

  • β 関数、位相進み、分散などを含む線形光学設計とマッチング
  • 既存輸送ラインの改良や新規ライン案の簡易検討
  • 加速器光学の教育・トレーニング用途

商用的な観点では、Beta 自体は無償配布ですが、 ライセンス製品を消費せずに初期の光学検討を行える環境を提供することで、 スイート全体の価値を高めています。

PlotWin – 位相空間可視化ツール(無償)

PlotWin は、TraceWin と Toutatis が出力する 「.dst」および 「.plt」 ファイルを読み込み、 位相空間プロットや横プロファイル、エミッタンスなどの派生量を表示するツールです。

主な機能

  • 単一・複数位置における位相空間ポートレートの可視化
  • x–x′、x–y、x–y′ など、さまざまな平面でのビームプロファイルおよびエミッタンス推定
  • ズーム、画像・データ保存、スケーリング、コピー&ペーストなどの標準的な GUI 機能

PlotWin は無償かつ TraceWin・Toutatis と緊密に連携しているため、 汎用プロットツールへのデータエクスポートや独自スクリプトの作成に時間を取られることがありません。 また、メインのシミュレーションコードを使用しないメンバーでも、 プロットや基本統計を容易に確認できるため、関係者間のコミュニケーションを円滑にします。

導入メリット

加速器設計チームにとっての技術的メリット

エンドツーエンドのモデリング

RFQ Designer、Toutatis、GenDTL、GenLinWin、Beta、PlotWin、TraceWin を組み合わせることで、 1 つのエコシステム内で加速器チェーン全体をモデリングできます。

  1. 光学・概念設計(Beta)
  2. RFQ 共振器および RFQ ビームダイナミクス(RFQ Designer + Toutatis)
  3. DTL およびリニアックセクションの生成(GenDTL + GenLinWin)
  4. 多粒子・エラー解析(TraceWin)
  5. 可視化・レポーティング(PlotWin)

設計ステージ間の移行時に生じがちな摩擦を減らし、設計ライフサイクル全体にわたって、 仮定条件と参照ケースの一貫性を維持できます。

ビーム品質向上と損失制御

高強度リニアックでは、許容ビームロスや放射化限界が設計の制約となることが多くあります。 DACM スイートを用いることで、次のような検討が可能です。

  • マシン全体にわたるエミッタンス成長やハロー形成の定量化
  • 現実的なエラー条件下で損失が発生しやすい領域の特定
  • ステアリングや光学調整、コリメーションなどの補正スキームをシミュレーション上で評価

たとえば TraceWin のモンテカルロエラー解析とビームロス統計機能により、 設置前にアライメントや電場許容差を評価することができます。

設計反復の高速化

TraceWin や PlotWin の GUI により、まず定性的な検討をすばやく実施し、 その後バッチモードやクラスター上で詳細な最適化を継続できます。 クライアント/サーバー機能、並列シミュレーション、一貫したデータ形式の組み合わせにより、 手作業による煩雑な作業を削減します。

マネジメントの観点からは、次のような効果につながります。

  • 設計レビューサイクル間隔の短縮
  • エネルギー、電流、レイアウトなどが異なる複数シナリオを、追加コストを抑えつつ比較可能
  • 理論、工学、運転チーム間のコミュニケーション向上

組織・ビジネス面でのメリット

リスク低減とガバナンス強化

大規模プロジェクトでは、ビームダイナミクスに起因するリスクが安全委員会や資金提供機関の重要な関心事項となります。 国際プロジェクトでの適用実績や実験とのベンチマーク結果に裏打ちされたコードスイートを用いることで、 解析結果に対する信頼性を高めることができます。

また、最適化履歴やラティスファイルを設計報告書とあわせて保存することで、設計判断のトレーサビリティを確保できます。

予算とリソースの最適化

シミュレーションはハードウェア試験を完全に置き換えるものではありませんが、次のような効果が期待できます。

  • 必要となるプロトタイプやモックアップの削減
  • 重要部品や重要寸法の早期特定による調達計画の精度向上
  • コストやスケジュールの面で負担が大きい設計変更の抑制

社内に大規模なビームダイナミクスフレームワークを開発・保守する体制がない組織にとっては、 DACM ソフトウェアの採用により自前開発の負荷を回避できます。

人材獲得と教育

DACM スイートは多くの研究施設で利用されており、その利用経験は加速器物理研究者の履歴書にとってプラスの要素になります。 大学や研究所においては、これらのツールにアクセスできる環境を提供することで、 将来の共同研究でも利用されうる実務的なコードを用いた教育・トレーニングを実施できます。

情報システム部門にとってのメリット

専門的な科学技術ソフトウェアを導入する際には、プラットフォーム対応、ライセンス管理、セキュリティ、既存インフラとの統合など、 情報システム部門にとっておなじみの課題が生じます。 DACM スイートは、これらの点にも配慮して設計されています。

明確なライセンスモデル

公開情報によると、ライセンス体系はおおむね以下のように整理されています。

  • ライセンス区分は、教育・研究機関向けと商用企業向けの 2 種類
  • ライセンスは個々のユーザに紐づけて発行
  • ライセンスは一定期間(現在は 2 年間)が有効期間となり、継続利用には更新が必要

情報システム部門にとっては、次のような運用が容易になります。

  • ライセンスを利用者アカウントと明確にひも付け
  • 更新リマインダーの計画的な設定
  • プロジェクト期間や予算サイクルとライセンス期間を合わせた計画立案

コントロールしやすい導入範囲

スイート全体はコンパクトで焦点が明確です。

  • 主にデスクトップ実行可能なアプリケーション群で構成
  • 強制的なクラウドコンポーネントは不要
  • TraceWin のクライアント/サーバー機能を用いたリモート計算も、組織内ネットワーク内に閉じた形で運用可能

外部依存の少なさにより、セキュリティレビューやインフラ設計をシンプルに保てます。

クロスプラットフォームへの配慮

計算用クラスターやデスクトップ環境において、Linux と Windows など複数 OS の混在運用を行う組織は少なくありません。 DACM コード群の中には、TraceWin のように複数 OS 向けビルドが明記されているものや、 GenDTL のように Win32 アプリケーションとして提供されつつ Wine 上の利用が報告されているものがあります。

情報システム部門は、こうした情報と自組織のポリシーを組み合わせることで、適切な配備戦略を選択できます。 また、必要に応じてターミナルサーバーや仮想デスクトップ環境を通じた提供も可能です。

利用シーン(ユースケース)

国内外の加速器施設

中性子源、希少同位体施設、高出力プロトン・イオンリニアックなどの大型加速器施設では、次のような課題が共通しています。

  • 高強度ビームに対応したインジェクタおよび RFQ 段の設計
  • 効率と信頼性を両立するリニアックセクションの最適化
  • 将来のアップグレードや機械開発キャンペーンの計画立案

このような文脈で、DACM ソフトウェアは次のように活用できます。

  • RFQ Designer、Toutatis、TraceWin を組み合わせた新規インジェクタラインのスタート・ツー・エンド設計スタディ。
  • GenDTL/GenLinWin と TraceWin による DTL や超伝導リニアック構成案の比較評価。
  • 電流・デューティサイクル増強などの性能向上を想定した空間電荷効果・エラー感度解析。

TraceWin のドキュメントや関連論文では、SPL、LINAC4、EURISOL など欧州のプロジェクトにおいて、 ビームダイナミクス解析のリファレンスコードとして用いられてきた事例が紹介されています。

産業用ライナックおよび RFQ メーカー

材料処理、滅菌、貨物検査などに用いられる産業用ライナックや、RFQ ベースのインジェクタを提供するメーカーは、 性能・フットプリント・コストのすべてで高い競争圧にさらされています。 こうしたメーカーにとって、DACM ソフトウェアは次のような用途に役立ちます。

  • 顧客要求(エネルギー、電流、ビームサイズなど)に合わせたコンパクトなインジェクタ/リニアックソリューションの設計。
  • 新しい空洞ファミリーやフォーカシングスキームを、加工・ろう付け前にシミュレーション上で検証。
  • 提案書や技術仕様書において、シミュレーションに基づく性能見積りを提示。

ビームダイナミクス解析を外部協力者に全面委託するのではなく、自社内に DACM ツールによる解析能力を持つことで、 検討サイクルの短縮と設計ノウハウの保護が可能になります。

医療・アイソトープ製造用ライナック

医療用ライナックやアイソトープ製造施設(PET、治療用など)では、次のような要求が強く求められます。

  • 高い信頼性と稼働率
  • ビームロスと放射化の厳格な管理
  • 堅牢なコミッショニングおよびチューニング手順

DACM ツールは、これらの課題に対して次のように貢献します。

  • 医療用途やターゲット用途の制約に合致したインジェクタ・輸送ラインの設計支援。
  • 実機制御アルゴリズムやチューニング戦略を現実的なビームモデル上で検証する「バーチャルコミッショニング」環境の提供。
  • 四重極や RF 調整の影響をシミュレーション上で確認し、オペレータ訓練に活用。

施設によっては特定の方面で他のコードを併用する場合もありますが、そのような環境においても DACM ツールを独立したクロスチェックとして利用することは、 安全性が重視されるシナリオで特に有用です。

大学・研究グループ

加速器物理を教育・研究する大学や小規模実験設備を持つ研究グループでは、 Beta、PlotWin、および適切なライセンスに基づく TraceWin などを組み合わせることで、次のような活動が可能になります。

  • 講義や演習でのビーム光学・位相空間概念の可視化。
  • 学生にシンプルなリニアック設計とスタート・ツー・エンドシミュレーションを課題として与えるプロジェクト型教育。
  • テストスタンドやコンパクト加速器に対するビームダイナミクス解析。

Beta と PlotWin は無償のため、学生個人の PC に広くインストールし、 ライセンス製品は演習室や研究グループ内に集中的に配置するといった運用が可能です。

FAQ

Q1. CEA/DACM ソフトウェアスイートにはどのような製品が含まれますか?

A. CEA Saclay の加速器部門が開発した、加速器設計・ビームダイナミクス用の 7 つの主要コードが含まれます。

  • ライセンス製品(シェアウェア):TraceWin、Toutatis、RFQ Designer、GenDTL、GenLinWin
  • 無償コード:Beta(ビーム光学)、PlotWin(位相空間可視化)

Q2. これらのツールは誰が開発・保守していますか?

A. すべての DACM コードは、フランス CEA Saclay の加速器部門(DACM)が開発・保守しています。

また、DACM コード専用のユーザフォーラムが運営されており、 新バージョンやパッチの案内、ユーザからの技術的な質問への回答などが提供されています。

Q3. 既存の計算クラスターと連携することはできますか?

A. TraceWin には、クライアント/サーバーアーキテクチャが組み込まれており、 多数のシミュレーションを異種混在マシン上で並列に実行できます。 これにより、モンテカルロ解析やパラメータスキャンをクラスター上で効率よく行うことが可能です。

一般的な連携方法としては、次のようなものが挙げられます。

  • 利用者のデスクトップ上で TraceWin クライアントを動作させ、組織のポリシーに沿った計算ノード群へジョブを送信。
  • 入出力ファイルを共有ネットワークストレージ上に配置し、既存のアクセス制御ポリシーに従って管理。

Q4. DACM ソフトウェアは他の加速器コードと比べてどこが違いますか?

A. 一般論として、DACM ツールには次のような特徴があります。

  • あらゆる加速器形式を網羅するのではなく、とくに 高強度リニアックとインジェクタ にフォーカスしていること。
  • 国際的な大型プロジェクトにおいて、ビームダイナミクス解析の基準となるコードとして用いられてきた実績があること。
  • ラティスジェネレータ(GenDTL、GenLinWin)、RFQ ツール(RFQ Designer、Toutatis)、中核となるビームダイナミクスコード(TraceWin)が密接に統合されていること。

多くの組織は、汎用 PIC コードや有限要素解析、光学コードなどと DACM コードを組み合わせて利用していますが、 リニアックに特化した一貫性のあるスイートを持つことで、設計プロセスの効率と再現性を高めています。

メーカーの製品サイト
https://www.dacm-logiciels.fr/

【言語】英語