目次
はじめに
業務アプリにグリッドを置くと、ユーザーは無意識に Excelの操作感(Shiftで範囲、Ctrlで追加、行/列ヘッダー連動など)を期待します。
この“期待値との差”は、学習コスト・入力ミス・作業時間に直結します。 本記事では、TMS FNC DataGrid でExcelライクな選択操作を実現する考え方を、実装視点で整理します。
なぜ「Excelライクな操作感」が重要なのか
1:ユーザーの期待値は“表計算”
グリッドは「表」として見えるため、ユーザーは表計算の常識で操作します。 ここがズレると、UIが難しく見えたり、間違えやすくなったりします。
2:選択操作の差が生産性を左右する
Excelライクな選択ができると、次のような作業が短時間で終わります。
- 範囲選択 → 一括編集/コピー&ペースト
- 列単位・行単位での確認(ヘッダー連動で“今見ている場所”が分かる)
- キーボード主体の高速操作(Shift+矢印など)
TMS FNC DataGridでできること
1:範囲選択(Shift/Ctrl)を自然にする
Excel風の範囲選択は「起点(アンカー)」と「伸縮側(アクティブ端)」を分けて扱うのがポイントです。 DataGridの選択モードと範囲の扱いを適切に設定することで、自然な範囲選択に近づけられます。
2:行・列ヘッダー(A,B,C…/1,2,3…)
固定行・固定列をヘッダーとして使い、列見出しを A,B,C…、行見出しを 1,2,3… にすると、 “スプレッドシート感”が一気に上がります。
3:ヘッダー連動ハイライトで迷子を防ぐ
範囲選択したときに該当行/列のヘッダーも視覚的に追従すると、 大きな表でも「今どこを選んでいるか」が分かりやすくなります。
実装の要点
1:セル範囲選択を有効化
まずはセル範囲選択を有効化し、Excelのように範囲を伸縮できる設定にします。
// 例:範囲選択
Grid.Options.Selection.Mode := gsmCellRange;
// RangeTypeは製品/環境により名称が異なる場合があります。
// “アンカーを保持して範囲を伸縮”する設定を選びます。
2:固定行・固定列を“見出し”として使う
先頭列を行番号、先頭行を列見出しとして使う場合は、固定セルを確保します。 固定セルへの選択反映を有効化すると、ヘッダー連動を作りやすくなります。
// 例:固定セルの利用
Grid.FixedColumnCount := 1;
Grid.FixedRowCount := 1;
// 固定セルにも選択状態を反映(名称は環境により異なる場合があります)
3:見た目と操作性の調整
- ヘッダー文字の中央寄せ(表計算らしさが出る)
- 選択色・フォーカス表示の調整(“何が選ばれているか”を明確に)
- タッチ環境がある場合はスクロール操作も検討
業務アプリでの活用例
- 受発注・在庫・請求の明細入力:範囲選択で一括補正、入力速度が上がる
- データチェック画面:列単位の確認がしやすい(ヘッダー連動が効く)
- クロスプラットフォームUI:VCL/FMX/Webで操作感を揃え、教育コストを下げる
まとめ
本記事では、TMS FNC DataGridでExcelライクな選択操作を実現する考え方を整理しました。
- “表”のUIはExcelの期待値に寄る
- 範囲選択+固定セル(ヘッダー)で操作感を近づけられる
- ヘッダー連動ハイライトで大規模表でも迷子を防げる
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