目次
- 1. 概要
- 2. 製品紹介
- 3. 導入メリット
- 4. 主なユースケース
- 5. 導入シナリオと期待される効果
- 6. FAQ
1. 概要
Neurobehavioral Systems(NBS)が提供する Presentation® は、神経科学・心理学・行動科学のための高精度な刺激提示・実験制御プラットフォームです。標準的な Windows 10/11 PC 上で動作し、視覚・聴覚・多モーダルの刺激をミリ秒レベルの時間精度で提示できるよう設計されており、fMRI、EEG/ERP、MEG、サイコフィジクスなど要求水準の高い実験をサポートします。
世界中の行動実験・神経画像研究で利用されており、研究者や企業のR&Dチームは、刺激タイミング、機器トリガー、被験者応答を厳密に制御しながら、複雑な実験を設計・実行・ログ取得することができます。
情報システム部門・IT担当者の視点から見ると、Presentation は次のような特徴を持ちます。
- Windowsベース:標準的なWindows PCで動作し、研究室・病院・企業内の統制された環境に導入しやすい。
- ハードウェア連携に強い:fMRI スキャナ、EEG/ERP・MEGシステム、眼球運動計測装置、応答ボックス、生理指標記録装置などと、デジタルI/Oやシリアル/パラレルポート、TCP/IP などを通じて連携可能。
- 高いプログラマビリティ:独自スクリプト言語(SDL、PCL)に加え、Presentation エンジンへアクセスする Python インターフェースを備え、柔軟な実験ロジックを記述できる。
- 拡張性:Visual Stimulus Generation(VisGen)ツールキットによる動的な視覚刺激生成など、拡張機能を製品に統合。
実装面での主なメリット
- 検証可能なタイミング:高精度な時間制御と詳細なイベントログにより、刺激と測定信号の同期を確認・追跡しやすい。
- 開発工数の削減:豊富なドキュメントやサンプル実験、Experiment Pack(実験パッケージ)により、代表的な課題をテンプレートとして流用可能。
- 将来を見据えたプラットフォーム:64bit 対応や音声認識機能の追加、新しい動画・音声機能など、ハードウェアや研究ワークフローの変化に追随する継続的なアップデート。
一般的な刺激提示ソフトウェアと比較して、Presentation は高精度な時間制御とハードウェア連携に重点を置いた専用プラットフォームとして位置づけられます。GUIベースの操作だけでなく、スクリプトやPython APIによる細かな制御を重視している点が特徴です。
典型的なユースケース
- 認知・臨床神経科学の実験(fMRI、MEG、EEG/ERP など)
- 反応時間測定を重視する行動課題
- 標準化された課題バッテリーを用いた治験・医療評価
- 認知トレーニングやニューロマーケティング研究における統制された映像・音響刺激提示
- Experiment Pack やモバイルアプリを活用した教育・研修・授業での利用
各モジュールやライセンス種別、具体的なハードウェア連携例などの詳細については、サイト内で「ライセンス詳細」「ハードウェア連携詳細」などの専用ページを用意し、内部リンクで誘導すると構成しやすくなります。
2. 製品紹介
2-1. Presentationとは?
Presentation は、Neurobehavioral Systems, Inc. が開発した、心理・神経行動実験のための Windows ベースソフトウェアです。2000年代初頭にリリースされて以来、神経科学・心理学・生理学など多様な分野で利用されてきました。
中核となる役割は次の3つです。
- 刺激提示エンジン:複雑な視覚・聴覚・多モーダル刺激を高精度に提示。
- 実験制御システム:試行構造、ランダム化、順応・フィードバックなどのロジックを柔軟に定義。
- データ収集ハブ:被験者の反応を記録し、外部機器からのトリガーやイベントと同期。
Presentation は、fMRI、EEG/ERP、MEG、単一ニューロン記録、眼球運動測定、反応時間課題、一般的なサイコフィジクス実験など、幅広いパラダイムに用いられています。
2-2. システム構成と対応環境
ITの観点から見ると、Presentation は Microsoft Windows 環境に特化しているため、導入・運用がシンプルです。
- 現行バージョンは Windows 10/11 を正式サポート。
- 旧バージョンでは、過去のWindows世代(XP/Vista/7/8など)にも対応しており、長年にわたり Windows ベースの研究環境で使われてきました。
- macOS向けのネイティブ版は提供されていませんが、一般的には Mac ハードウェア上で Windows 環境を構築し、その上で利用されるケースもあります。
この Windows 中心の設計により、次のような利点があります。
- グループポリシーやActive Directoryとの親和性:既存の企業・大学のドメイン管理下で運用しやすい。
- 標準PCハードウェアで運用可能:特別なワークステーションに限定されず、更新・保守がしやすい。
- 複数研究室・複数施設への展開:同一イメージを複数PCに配布するなど、スケールさせやすい。
導入形態としては、次のようなシナリオが一般的です。
- スキャナや生理計測機器に接続された専用の実験用PC
- 画像診断部門における臨床ワークステーション
- ユーザーテストやニューロマーケティングに用いる企業内のR&D用端末
ライセンスは、どのPCに何台、どのくらいの期間アクティベートするかによって管理されます。
2-3. マルチモーダル刺激提示とタイミング精度
Presentation は、時間精度とイベントログを重視した設計になっています。主な機能は次の通りです。
- 多様な刺激モダリティに対応
- 2D画像
- 3Dグラフィックス
- 圧縮動画
- 音声(複数音声ストリームの同時再生を含む)
- 複数モダリティの同時提示
- 動画・音声・静止画・テキストなどを組み合わせて提示。
- 表示内容は、ホストPCと接続ハードウェアの性能に応じて柔軟に構成可能。
- 高精度な時間制御
- 刺激提示と被験者応答をミリ秒レベルで制御・記録できるよう配慮された設計。
- 刺激の開始・終了時刻、応答時刻などのタイミング情報を詳細にログとして残すことで、生理信号との厳密なアライメントを実現。
- タイミング検証機能
- 実際のハードウェア環境で得られるタイミングを検証し、環境ごとの特性・遅延を把握するための機能を提供。
これらにより、研究・ITチームは次のようなことが可能になります。
- 複雑な視覚・聴覚イベントのシーケンスを定義
- 各イベントの提示タイミングを厳密に制御
- 取得したタイムスタンプを、画像診断装置や生理計測システム側のトリガー情報と突き合わせて分析
数ミリ秒単位のズレが結果に影響を与え得る実験において、Presentation の時間精度とログは大きな価値を持ちます。
2-4. スクリプト言語・Pythonインターフェース・SDK
Presentation は、ユーザーのスキルレベルに応じて選べる複数のプログラミング手段を提供します。
- SDL(Scenario Description Language)
- 刺激や試行構造を記述するための宣言的な言語。
- 各トライアルで提示する画像・音声・動画・タイミングなどを定義。
- 実験開始前に刺激リストやランダム化を生成する用途に適しています。
- PCL(Program Control Language)
- CやBASICに似た構文を持つ、強い型付けのスクリプト言語。
- ループ・条件分岐・サブルーチン・適応的課題など動的な制御を記述可能。
- SDLで定義したオブジェクトを操作したり、コードだけで刺激を生成したりできます。
- Pythonインターフェース
- Python から Presentation エンジンを呼び出し、実験ロジックを Python で記述可能。
- 刺激生成、ハードウェア制御、タイミング制御などの機能にアクセスでき、既存の Python ベースの解析・統合環境との親和性が高い。
- SDK(Software Development Kit)とControl API
- 独自のワークスペース拡張機能や眼球運動計測拡張、外部アプリケーションからの実験制御などを実現するためのツール群。
- Control API を使うことで、外部プログラムから実験ファイルをロードし、開始・停止などを制御できます。
これらにより、次のような使い分けが可能です。
- プログラミング経験の少ないユーザー:テンプレート実験や Experiment Pack を中心に利用し、必要に応じてパラメータだけを変更。
- 中級ユーザー:SDL/PCLで既存課題を自施設向けにカスタマイズ。
- 上級開発者:PythonやSDKを用いて、既存分析パイプラインや自社システムと密接に統合。
2-5. Visual Stimulus Generation(VisGen)ツールキット
Visual Stimulus Generation(VisGen)ツールキットは、現在 Presentation のコア製品に統合されている視覚刺激生成機能です。
主な特徴は次の通りです。
- オンザフライの2D刺激生成
- 心理物理実験でよく用いられる多様な2D視覚刺激を、実行時に動的生成。
- 生成された刺激は、Presentation の「picture」刺激の一部として、他の画像・動画・音声と組み合わせて利用可能。
- パフォーマンス最適化
- 生成時間を最小化しつつ画質を維持するよう最適化されており、時間精度を重視する実験でも利用しやすい。
- 高度な合成方法
- マスク・最大値・最小値・乗算・加算など、複数の合成モードを利用可能。
- 基本的なパターンを組み合わせて、複雑な刺激を柔軟に構成できます。
VisGen を利用することで、標準的なサイコフィジクス刺激を作成するために外部グラフィックスソフトを毎回利用する必要が減り、Presentation 内で完結したワークフローを構築できます。
2-6. モバイル・Web実験
NBS は Presentation Mobile を提供しており、Windows 版 Presentation で作成した実験をモバイルデバイス上で実行できます。
- 実験は Windows 版 Presentation 上で設計・テスト。
- ホスティングされた実験をモバイルアプリからダウンロードし、iOS/Android 端末上で実行。
- 実験データは暗号化して保存し、後からまとめて取得することも可能。
- Presentation エンジンを用いた実験や視覚錯視デモを集めたモバイル向けアプリ群も提供されています。
これにより、以下のような利用が可能になります。
- 地理的に離れた被験者からのデータ収集
- 授業やトレーニングでのタブレット活用
- 倫理・規制に配慮しながら、ラボ外環境(教室や待合室など)での課題実施
2-7. ライセンスとアクティベーション
Presentation のライセンス体系は、アクティベーション数と期間に基づく柔軟なモデルになっています。
- 1つのライセンスは、一定期間内に使用できるアクティベーション(PC台数、回数)を定義。
- アクティベーションは「特定のPCでプレゼンテーションを実行できる権利」に相当。
- ライセンスの種類に応じて、以下のようなアクティベーション方法があります。
- ライセンスコードによるアクティベーション
- USBキーによるアクティベーション(キーを挿したPCで利用可能)
- 実験単位のアクティベーション(特定の条件下で実験を実行可能にする方式)
標準的なライセンスでは、大学・研究機関・非営利団体・企業などが対象となり、短期から複数年にわたる長期まで、さまざまな期間設定が用意されています。
3. 導入メリット
3-1. 研究・臨床チーム向けのメリット
研究者や臨床スタッフにとって、Presentation は次のような利点をもたらします。
- 高い時間精度
- 刺激と応答の時間情報を詳細に記録し、fMRIやEEG/ERP、MEGなどの生理データと高精度に同期。
- 多様な実験タイプを1つのプラットフォームで
- 行動課題、認知課題、臨床アセスメント、感覚実験など、幅広いパラダイムを同一ソフト上で実装可能。
- 広範な機器連携
- スキャナ、脳波計、眼球運動計測、応答ボックスなど、多数の機器と連携できるインターフェースを備えているため、既存設備と組み合わせやすい。
- 再利用性・共有性
- 実験ファイルやテンプレートを利用して、プロジェクト間・拠点間で課題を再利用しやすく、提供されている例題や Experiment Pack により、代表的な課題をすぐに試すことができる。
これらの特性により、プロジェクトを跨いだ標準化や、共同研究先との課題共有が容易になります。
3-2. 企業R&D・商用利用におけるメリット
NBS は Presentation を、研究用途だけでなく商用・臨床アプリケーションでも利用しやすいプラットフォームとして位置づけています。
企業環境での主なメリットは次の通りです。
- 治験・医療評価における認知タスクの実装
- 注意・記憶・実行機能などを測定する標準化された課題を構築し、多施設にわたる試験で共通の条件で実施。
- ニューロマーケティング・消費者調査
- 映像・音声・画像などの刺激を正確なタイミングで提示しつつ、生理反応や行動指標を同期取得。
- 製品評価・UXテスト
- インターフェースやプロトタイプを提示し、応答時間や正答率などの詳細なデータを収集可能。
- 長期的に利用できる商用プラットフォーム
- 継続的な開発・保守が行われている商用ソフトウェアであるため、変更管理やベンダーサポートが求められる環境にも適しています。
3-3. 情報システム部門・IT担当者にとってのメリット
IT 部門の立場からは、次のようなポイントが評価されます。
- 標準的なWindowsプラットフォーム
- 既存のソフトウェア配布・端末管理・アンチウイルス・エンドポイント管理ツールを活用しながら導入可能。
- 柔軟なライセンスとアクティベーション
- プロジェクトの規模や期間に応じて、アクティベーションを研究室や施設間で割り当てやすい。
- ハードウェア抽象化レイヤー
- Presentation のハードウェアインターフェースが、複数メーカーの機器を統一的に扱う層として機能し、機器構成変更時の影響を軽減。
- 充実したドキュメントとサポートチャネル
- オンラインヘルプ、チュートリアル、ユーザーフォーラムなどが用意されており、新規導入時の立ち上げやトラブルシューティングを支援。
これにより、研究者個人に依存した「自作ツール」の保守負担を軽減し、組織として安定した運用体制を整えやすくなります。
3-4. コンプライアンス・監査・データ完全性
規制の厳しい環境では、実験の実施内容を後から確認できることが重要になります。Presentation は次のような点で支援します。
- 詳細なイベントログ
- 刺激開始・終了、トリガー送受信、被験者応答などを時間情報とともに記録し、実験の実行状況を追跡可能。
- 生理データシステムとの統合
- EEG・MEG などの記録装置にイベントコードを送出し、記録データのタイムライン上に刺激情報を埋め込むことができる。
- モジュール化された実験ファイル
- 実験設定の変更内容をファイルレベルで管理できるため、プロトコルの版管理や内部的な変更承認フローと組み合わせやすい。
GCP や ISO ベースの品質システム、内部SOPに従う組織においても、「被験者がいつ何を見たか/聞いたか」「それがどの信号に対応するか」を技術的に裏付ける材料として活用できます。
3-5. 他の刺激提示ソフトウェアとの違い
刺激提示・実験制御ソフトウェアには複数の選択肢がありますが、Presentation は次のような特徴で差別化されています。
- 時間精度と検証機能への強いフォーカス
- 一般的なPC環境であっても、刺激提示のタイミング精度とその検証を重視して設計。
- スクリプト中心の設計と複数言語対応
- SDL・PCL・Pythonといった複数の記述手段を提供し、GUI操作だけでは表現しにくい複雑なロジックも実装しやすい。
- 統合された視覚刺激生成機能
- VisGen ツールキットにより、典型的なサイコフィジクス刺激をソフトウェア内で生成できるため、外部アプリへの依存が減る。
- モバイル実験への公式対応
- Presentation Mobile などを通じて、PCとモバイルをまたいだ課題実行が可能。
これらのポイントを、自組織のニーズや既存ツールとの組み合わせを踏まえて検討することで、Presentation の位置付けを明確にできます。
4. 主なユースケース
4-1. 認知・臨床神経科学研究
多くの大学・研究センターで、Presentation は認知・臨床神経科学実験の中核ツールとして利用されています。
典型的な応用例:
- 知覚・注意課題
- 動き・コントラスト・空間周波数などを精密に制御した視覚刺激、時間構造を厳密に管理した聴覚刺激など。
- 記憶・学習実験
- アイテム認知、連合学習、ワーキングメモリ課題など、刺激提示と応答計測を伴う課題。
- 臨床パラダイム
- 神経疾患や精神疾患の被験者を対象とした課題を実装し、画像診断や生理指標と組み合わせて解析。
視覚・聴覚刺激の同期提示、応答デバイスからの入力、fMRIやEEG/MEGとのトリガー連携を一つのプラットフォームで扱える点が強みです。
4-2. fMRI・MEG・EEG/ERPなどの生理学的実験
Presentation は、以下のような生理学的測定を伴う実験で広く利用されています。
- fMRI(機能的MRI)
- スキャナからのトリガーパルスと同期して刺激提示を行い、画像取得と刺激の関係を明確に管理。
- EEG/ERP
- 刺激時刻をミリ秒単位で正確に記録し、事象関連電位(ERP)の解析に必要なトリガー情報を提供。
- MEG
- 高時間分解能の磁場計測と整合するタイミング精度を確保しつつ、視覚・聴覚刺激を提示。
- 単一ニューロン・電気生理
- スパイク活動と刺激イベントを正確に対応づけるためのイベントコード送出とタイムスタンプ付与。
インターフェースとしては、パラレルポート・シリアルポート・デジタルI/O・TCP/IP などを用いて、外部装置とイベント情報をやり取りします。
4-3. 行動実験・サイコフィジクス
神経画像を伴わない行動実験やサイコフィジクス研究でも、Presentation は有用です。
- 刺激のタイミング・コントラスト・運動・空間配置などを細かく制御。
- 被験者の反応時間・正答率などを詳細にログとして記録し、標準的な分析に必要なデータを整然と出力。
- 標準的な Windows PC にインストールできるため、複数のテストステーションを低コストで構成可能。
視覚刺激生成に VisGen を用いることで、特定のパターンやグレーティングなどを簡単に作成できます。
4-4. 治験・医療評価
治験や医療評価において、Presentation は次のような場面で利用できます。
- 多施設治験での標準化課題
- 認知機能を評価する課題を統一し、各施設で同じ条件・同じタイミングで実施。
- 画像診断を伴う評価
- fMRI などの画像データと課題遂行状況を紐づけ、客観的なアウトカム指標として利用。
- 臨床検査バッテリーの一部として
- 視野検査・注意検査・記憶検査など、コンピュータ化されたタスクを統合し、一元的に記録管理。
プロトコルの変更履歴を実験ファイルの更新として管理できるため、治験文書との対応付けにも使いやすい構成です。
4-5. 認知トレーニング・アセスメント
Presentation は、認知トレーニングや認知アセスメントにも応用されています。
- 反復実施されるトレーニング課題
- 多回セッションのトレーニングにおいて、難易度調整やフィードバックをプログラムで制御。
- アセスメントバッテリー
- 同一環境で複数の課題を連続して実施し、各課題の結果を統一フォーマットで出力。
- モバイル・Webとの組み合わせ
- 必要に応じてモバイル実験ライセンスを組み合わせることで、クリニック外での評価にも展開可能。
Presentation エンジンの時間精度と豊富な記録情報により、微妙なパフォーマンス変化も捉えやすくなります。
4-6. ニューロマーケティングとUX・HCI評価
商用のニューロマーケティングや UX / HCI 評価では、Presentation を使うことで次のようなことが可能になります。
- 広告・プロモーション刺激の統制提示
- 動画広告、製品画像、デザイン案などを事前に定義した順序・タイミングで提示。
- 生理指標との同期記録
- EEG、眼球運動、皮膚電気反応などのデータと、提示した刺激のイベントコードを同期。
- 詳細なイベント分析
- 特定のフレームやサウンド、画面要素に対する反応を後から詳細に分析。
スクリプトベースの制御により、被験者ごとに条件を変えたり、応答に応じて刺激内容を変化させる適応的な評価も実装できます。
4-7. 教育・トレーニング・Experiment Pack
NBS は教育向けに Experiment Pack を提供しており、代表的な認知課題や臨床課題をまとめて利用できます。
- 完成済みの実験をそのまま実行できる「ターンキー」形式。
- Presentation のパラメータ機能により、外観・タイミング・試行数・刺激セット・教示文などをコード編集なしに変更可能。
- モバイル版の実験や視覚錯視デモを用いることで、授業や公開イベントでも直感的に紹介できます。
大学や教育病院では、これらのパックを利用することで、実習準備の手間を減らしつつ、学生に「古典的パラダイム」を体験させることができます。
5. 導入シナリオと期待される効果
以下は、Presentation の典型的な導入シナリオと、その際に期待される効果のイメージです。
5-1. シナリオ1:マルチサイトfMRI実験の標準化
複数病院にfMRIスキャナを持つ研究コンソーシアムが、同一の認知課題を用いて共同研究を実施するケースを考えます。
- SDL/PCL や Python を用いて、共通の実験ファイルと設定を作成。
- 各施設の刺激提示用PCに同一構成を展開し、スキャナからのトリガー入力とイベントコード出力を統一的に設定。
期待される効果:
- 各サイトでの刺激タイミングの挙動を事前に検証し、データを横断的に比較しやすくなる。
- 実験バージョンやパラメータを統一しやすく、解析時の条件差を最小限に抑制。
5-2. シナリオ2:治験における認知課題バッテリー
中枢神経系疾患を対象とした治験で、複数のクリニックにおける認知機能評価が必要なケースです。
- 代表的な認知課題を Presentation 上で統合し、バッテリーとして構成。
- 各クリニックの検査室PCに同一のバッテリーを導入し、被験者ごとに同じ手順で管理された課題を実施。
- 反応時間や正答率などの結果を標準化された形式でエクスポートし、試験データベースへ統合。
期待される効果:
- 課題開発と検証にかかる時間を短縮しつつ、標準化された認知アウトカムを提供。
- 課題内容・タイミングに関する詳細な仕様を、治験プロトコルや申請資料に明記しやすい。
5-3. シナリオ3:ニューロマーケティングラボの構築
企業のマーケティング部門や調査会社が、EEGや眼球運動計測を用いたニューロマーケティングラボを構築する場合です。
- 映像・静止画・音声を組み合わせた刺激シナリオを作成し、広告キャンペーンや製品コンセプトごとに条件を設計。
- EEG・眼球運動計測装置・その他生理計測装置にイベントコードを送出し、データにマーキング。
- 実験終了後、刺激イベントごとに生理反応や視線のパターンを分析。
期待される効果:
- 再現性の高いセッション設計と実行が可能になり、被験者間の比較がしやすくなる。
- 特定の場面や要素に対する反応を定量的に評価し、クリエイティブの改善や意思決定に活用できる。
5-4. シナリオ4:大学の心理学教育用実習
大学の心理学科で、多数の学生を対象に実験実習を行うケースです。
- Experiment Pack に含まれる標準実験(例えば Stroop 課題、n-back、Flanker などの代表的パラダイム)を用いて実習を設計。
- 教員側は共通の設定ファイルを配布し、学生はほぼそのままの形で実験を実行。
- 上級クラスでは、SDL/PCLやパラメータ機能を用いて課題を改変する演習を実施。
期待される効果:
- 教員の準備負担を大幅に減らしながら、毎年一貫した実験体験を提供。
- 学部レベルでは「既存課題の利用」、大学院レベルでは「課題の開発・改変」と、学習ステップを自然に分けられる。
5-5. シナリオ5:モバイル環境へのデータ収集拡張
研究グループが、ラボ外での短時間の認知課題を実施したい場合です。
- Windows 上で Presentation の実験を作成し、ホスティングサービスにアップロード。
- 被験者はタブレットやスマートフォンにインストールされたモバイルアプリから実験をダウンロードし、指定環境で実施。
- 暗号化されたデータをサーバ経由で取得し、PC版と同様のフォーマットで解析。
期待される効果:
- 教室・クリニック待合室・リモート環境など、ラボ以外の環境で柔軟にデータ収集が可能。
- PC版とモバイル版で、基本的な実験ロジックを共通化できるため、複数環境の結果比較もしやすい。
6. FAQ
6-1. 対応しているOSは?
- Presentation は Microsoft Windows 向けに開発されています。
- 現在のバージョンは主に Windows 10/11 を対象としており、過去のバージョンでは以前のWindows世代もサポートされていました。
- macOS向けのネイティブ版はありませんが、Mac 上で Windows 環境を構築して利用しているユーザーもいます。
6-2. 対応可能なハードウェアは?
Presentation は、さまざまな外部機器と連携することを想定しています。
- fMRI・EEG/ERP・MEG・単一ニューロン記録などの生理計測システム
- 眼球運動計測装置(専用の拡張モジュールを用いてリアルタイムデータを取得可能)
- 応答ボックスやキーボードなどの入力デバイス
- 外部ソフトウェアや Matlab ベースのシステム(ポートI/Oや専用インターフェースを通じて連携)
一般的に、デジタルI/O、パラレル/シリアルポート、TCP/IP通信などを利用することで、多くの装置と連携できます。
6-3. タイミング精度はどの程度ですか?
- Presentation は、刺激提示と応答記録の時間精度を重視して設計されています。
- 刺激イベントと応答のタイムスタンプが詳細にログされるため、生理データ側のタイムラインと高精度に対応付けることができます。
- また、利用しているハードウェア環境における実際のタイミングを検証するための機能も提供されており、導入時に性能を確認できます。
6-4. Matlab・Pythonなど外部システムとの連携は?
はい、複数の連携方法が用意されています。
- Pythonインターフェース:Presentation の機能を Python から呼び出して実験ロジックを記述可能。
- Matlabインターフェース:任意の Matlab コマンドを実行し、Presentation とデータをやり取りする機能が提供されています。
- Control API / SDK:外部アプリケーションから実験のロード・実行制御を行ったり、拡張モジュールを作成したりできます。
これにより、既存の解析パイプラインや自社システムに Presentation を組み込むことが可能です。
6-5. モバイル実験には対応していますか?
はい。Presentation Mobile を利用することで、Windows 上で作成した実験をモバイル端末で実行できます。
- iOS / Android 用のアプリから、ホストされた実験をダウンロードして実行。
- データは暗号化された形式で保存され、後からPC側にダウンロードして解析可能。
- 教育・トレーニング・臨床評価など、用途に応じてPCとモバイルを使い分けることができます。
6-6. データの保存・エクスポート方法は?
Presentation は、実験結果とイベント情報を詳細なログとして保存します。
- 刺激イベント・トリガー・被験者応答などが表形式のデータとして出力され、統計ソフトや解析スクリプトで扱いやすい構造になっています。
- EEG・MEGなどの生理計測データには、トリガーとしてイベントコードを書き込むことができるため、後からタイムライン上で対応する刺激を簡単に特定できます。
これらを組織側のデータ管理ポリシーと組み合わせることで、再解析や監査に耐えうるデータセットを構築できます。
メーカーの製品サイト
http://www.neurobs.com/
【言語】英語


