製品概要と価値提案
Jawset PostShot は、写真や動画といった一般的な2D素材から、数分でフォトリアリスティックな3Dシーンを生成する高度なソフトウェアです。TurbulenceFD で知られる Jawset Visual Computing によって開発され、Neural Radiance Fields(NeRF)と Gaussian Splatting などの先端的な機械学習技術を用いて、高精細な3Dを効率的に再構成します。結果として、RGB画像や動画だけから、質感やライティングまで忠実に再現された3D表現が得られます。
入力撮影には一般的なカメラ(スマートフォンを含む)で十分で、LiDAR や深度センサーは不要です。高価な専用スキャナーに頼らず、既にお持ちの映像資産を活用して3D化できるため、現場への導入障壁を大きく下げます。PostShot は、研究レベルの革新性と実務現場の生産性をつなぐ存在として、現実空間のハイファイなデジタルツインを短時間で構築することを可能にします。
もう1つの価値はデータ主権の確保です。処理はローカル環境で完結し、クラウドへのアップロードは不要です。写真やモデルは常に手元に留まり、厳格なデータポリシーを持つ組織でも安心して扱えます。クラウド往復が無いことは、知的財産の保護だけでなく、ネットワーク転送に伴う時間損失の削減にもつながります。
要するに、PostShot はスピード・品質・利便性を兼ね備え、VFXスタジオ、ゲーム開発、建築/設計、エンタープライズチームなど幅広いユーザーに対し、少ない学習コストで高度な3Dワークフローを提供します。
3D化の流れ(数分で画像から3Dへ)
PostShot は、以下の4ステップでエンドツーエンドの再構成ワークフローを提供します。
- 撮影(Capture):スマートフォン、DSLR、ドローンなど任意のカメラで被写体/環境を撮影します。多数の静止画、または被写体を様々な角度からカバーした動画のどちらでも構いません。特別なスキャン装置は不要で、通常のRGB画像だけで十分です。プロ用途では高解像度のRAW/高品質画像も活用できます。ヒント: 被写体を様々な視点から重複をもって撮ると、精度が向上します(フォトグラメトリと同様の考え方)。
- 学習(Train):画像や動画フレームを PostShot にインポートすると、AIエンジンがシーンの3D「放射輝度場(Radiance Field)」を学習・構築します。学習中はライブプレビューで再構成の進捗を確認でき、数分で新規視点からの見え方を回転して確かめられます。処理は現代的なGPUを活用するよう最適化されています。
- 編集/リファイン(Edit & Refine):初期の放射輝度場が生成されたら、必要に応じてリファインします。領域限定(ROI)学習で特定部位のディテールを集中強化したり、不要なスプラット点や背景をマスク/削除したりできます。大規模環境を複数セットで撮影した場合も、シームレスに統合可能です。AprilTag(位置合わせマーカー)の自動検出によるスケール/位置合わせにも対応し、セクション撮影の正確な統合を支援します(エディションにより可用性が異なる場合があります)。
- レンダリング/エクスポート(Render & Export):内蔵レンダラで任意視点の高解像度静止画やアニメーション(ターンテーブル/フライスルー)を生成できます。外部ワークフロー向けには、Unreal Engine 用プラグインでのリアルタイム利用、Adobe After Effects 用プラグインでのコンポジット連携に対応。さらに、点群(例:PLY)やカメラ姿勢などのデータ出力にも対応し、DCC/可視化ツールなど幅広いパイプラインで活用できます。
技術の中身:NeRF と Gaussian Splatting
Neural Radiance Fields(NeRF) は、空間上の各点からどのように光が放射されるかを学習するニューラルネットワークで、任意視点からの新規画像生成(ノベルビュー合成)を可能にします。ポリゴンメッシュではなく、連続的なボリューム表現としてシーンを扱うのが特徴です。
Gaussian Splatting は、シーンを多数の3Dガウシアン(スプラット)で表す手法です。半透明的な体素的点群が重なって実体感のある外観を形成し、ファー、樹葉、煙のような半透明要素や細部も滑らかに表現できます。レンダリングの高速性が高く、インタラクティブな操作に向きます。
両者を組み合わせることで、NeRF の高い再構成忠実度と、Gaussian Splatting の軽快な描画応答性を両立します。
主要機能
- スケーラブルなプロジェクト:入力画像枚数やシーン規模はハードウェア資源に応じて拡張可能。高解像度画像/高解像度学習・レンダリングにも対応(エディションにより可用性が異なる場合があります)。
- ライブプレビューによる高速反復:学習開始直後から進化する3Dモデルをその場で確認でき、カバレッジ不足の早期発見と迅速な取り直し/反復を支援。GPU最適化により実務時間を短縮。
- 柔軟な入出力:一般的な静止画/動画のインポートに対応。出力は放射輝度場/点群(例:PLY)、カメラ姿勢、レンダリング済みのPNG/TIFF等へ。※一部のプロフェッショナル形式はエディションにより異なる場合があります。
- 統合プラグインとパイプライン適合性:Unreal Engine、Adobe After Effects との連携を提供。コマンドライン(CLI)による自動化やバッチ処理にも対応(可用性はエディションにより異なります)。
- シーン編集/マスキング/マージ:ビューポート操作で不要要素のマスクや点群の選択削除、複数キャプチャの統合が可能。外部アライメント(例:BlockExchange)で実世界座標への整合も可能。AprilTag の自動検出による複数セットの位置合わせ/スケール化に対応(エディション依存)。
- ローカル処理とプライバシー:処理はローカル完結。画像/モデルのクラウド送信は不要で、コンテンツの所有権と運用ポリシーを保ちやすい設計。
- 継続的な進化:高性能GPU計算の知見を背景に、AI/ハードの進歩に合わせて機能/性能を継続改善。
導入メリット
スピードと効率化
AIによる自動化とライブフィードバックにより、カバレッジ検証と反復が迅速化。制作リードタイムを短縮し、早い段階での意思決定を後押しします。
コスト削減
標準的な撮影機材とワークステーションで運用でき、専用スキャナや外部委託への依存を軽減。ソフトウェア中心のワークフローにより、3D案件を内製化しやすくなります。
視覚的忠実度
放射輝度場による高密度な情報保持で、質感/ライティングをリアルに再現。幾何のみの手法では生じがちな欠落を補い、VFX・可視化・VRに適した完全性の高い結果を得られます。
データセキュリティ
処理はローカルで完結し、センシティブな画像/モデルを外部に送る必要がありません。コンプライアンス要件の順守を支援し、リスクを抑えます。
ワークフロー統合
一般的な形式対応とターゲット連携(UE/AE)、CLIによる自動化で既存パイプラインにスムーズに組み込めます。ジオリファレンス対応により GIS/CAD との整合も容易です。
使いやすさ
直感的なGUIと適切なデフォルト設定により、専門外のメンバーでも短期間で成果を出しやすい設計。ドキュメント/チュートリアル/コミュニティも学習を支援します。
活用事例
映画/VFX
デジタルセットスキャン:実景セットやロケーションを迅速に3D化し、実写と整合するVFX要素の合成を容易にします。
バーチャルプロダクション/背景:現実ロケーションから3D背景を生成し、LEDボリュームやリアルタイムエンジンで正しい視差と奥行きを再現。
プリビズ/コンセプト:実環境を撮影して3D上でバーチャルロケハンやカメラ検討を行い、複雑なショット設計を支援します。
ゲーム/VR/AR
実環境キャプチャ:Unreal Engine に放射輝度場を取り込み、リアルな背景/環境要素として活用。手作業モデリングを大幅に削減します。
VRトレーニング/シミュレーション:実在施設をVR化して、実務に近い空間での学習/訓練を可能にします。
AR/アセット生成:製品やランドマークを3D化し、ARアプリやインタラクティブビューアで活用します。
建築・土木・建設(AEC)
現況/竣工モデル:写真ベースで正確な3Dを構築。AprilTagや基準点でスケール・座標を合わせ、CAD/BIM 参照に利用できます。
施工進捗/ファシリティ管理:定期キャプチャで3Dタイムラインを作成し、比較/点検/教育に活用。大規模施設もセクションごとに撮影し、統合可能です。
設計可視化/合意形成:現況3Dを下敷きに計画案を重ね、ステークホルダー間の理解を促進します。
文化財・ミュージアム
遺物の3Dデジタイズ:非接触・非侵襲で精細なモデル化が可能。表面の微細な質感・彩色も保持します。
遺跡/史跡の再構成:ドローン映像などから現況を3D化し、調査・研究・展示に活用。長期的な記録にも有効です。
教育/バーチャルミュージアム:来館者やオンライン向けに、没入型の3D体験を提供できます。
プロダクト/EC/マーケティング
高速プロトタイピング/反復:手造形や3Dプリント試作を即座に3D化し、評価・改良を加速。素材/仕上げ検討にも有用です。
EC用3Dモデル:実物の色/質感をそのまま取り込み、360°ビューアやARで訴求力の高い商品体験を実現。
広告/プロモーション:自在な視点/演出での静止画・アニメーション生成により、撮影の手戻りを削減します。
教育・研究
CV/CG研究の実験基盤:NeRF/GS 系の検証に実データで素早く着手可能。ベースライン生成や比較評価に適します。
STEM教育/学生プロジェクト:建築、考古、メディアアートなどで3D制作と可視化の学習を促進します。
科学可視化/解析:自然環境の3D化により、体積/面積測定やシミュレーションの基盤として活用できます。
よくある質問(FAQ)
フォトグラメトリとの違い
従来のフォトグラメトリが写真間の対応点からメッシュを構築するのに対し、PostShot はAIによるボリューム表現(放射輝度場)を学習します。複雑な外観/ライティングの扱いに強く、手作業の後処理を抑えやすいのが利点です。LiDAR 等のハードウェアスキャナと比べても、標準カメラで運用でき、外観情報(色/光)を豊かに保持します。
NeRF と Gaussian Splatting とは
NeRF はシーンの「光の出方」を学習して任意視点の描画を可能にする仕組み、Gaussian Splatting は多数のカラー付き3Dガウシアンを重ねて表面を表現する手法です。両者の組み合わせにより、フォトリアルな新規視点生成と軽快な操作性を実現します。
入力/出力と対応フォーマット
重複を確保した複数視点の写真、または動画(内部でフレーム抽出)を入力します。一般的な静止画/動画形式を取り込み、出力はレンダリング済み画像/アニメーション、点群(例:PLY)、カメラ姿勢などに対応します。※一部のプロフェッショナル形式はエディションにより可用性が異なる場合があります。
推奨ハードウェア
PostShot はGPUアクセラレーションを活用します。複数コアCPU、十分なメモリと高速ストレージを備えた、互換性のある NVIDIA GPU 搭載の最新 Windows ワークステーションを推奨します。
スタンドアロンかプラグインか
PostShot はスタンドアロンのGUIアプリケーションです。結果の活用を容易にするため、Unreal Engine(リアルタイム)と Adobe After Effects(コンポジット)向けの連携を提供します。コマンドラインによる自動化/バッチ処理にも対応します(エディションにより可用性が異なる場合があります)。
外部活用・エクスポート方法
- PostShot 内でのレンダリング:高解像度静止画やカメラパス付きアニメーションを直接出力。
- 連携プラグインの利用:Unreal Engine / After Effects へシーンを転送してリアルタイム/合成で活用。
- 3Dデータのエクスポート:点群(例:PLY)やカメラ姿勢を出力し、他ツールやフォトグラメトリ結果との併用に対応。
- 全周/パノラマ出力:360°ビュー等の環境マップとしても活用可能。
エディションの違い
Indie は個人/小規模向けで、商用利用可能なコア機能を提供します。Studio は上位機能として、先進フォーマット対応、高解像度/HDRでの学習・レンダリング、CLI による自動化、AprilTag 検出とアライン、カメラ/点群データのインポート(例:BlockExchange)などを追加します。プロジェクト互換性は維持され、上位エディションへ移行してもデータの囲い込みは発生しません。
スキルと学習コスト
直感的なUIと適切な初期設定により、基本的な撮影/3D操作の知識があれば短期間で使いこなせます。ライブプレビューで学習効果が見えやすく、ドキュメントやコミュニティもスキル習得を支援します。
まとめ
PostShot は、写真/動画を基にした高速・高品質な3Dシーン生成をローカル環境で実現し、使いやすさと実運用を両立しています。VFX の生産性向上、ゲーム環境の迅速な高品質化、文化財保存、設計/可視化、教育/研究など、幅広い領域での価値創出に貢献します。
メーカーの製品サイト
https://www.jawset.com/
【言語】English