目次
はじめに
ファイアウォール、IDS/IPS、EDR、SIEM──多くの組織では、すでに複数のセキュリティ製品を組み合わせて防御態勢を構築しています。 にもかかわらず、ランサムウェアや高度な標的型攻撃によるインシデントは後を絶ちません。 その背景には、ネットワーク環境の複雑化と、攻撃者側のスピード・巧妙さの向上があります。
Gatewatcher が提供する NDR Insight(The essential guide for CISO + CIO) は、 こうした状況のなかで Network Detection & Response(NDR) を 「サイバーレジリエンスを高める中核コンポーネント」と位置づけ、 経営層とセキュリティ部門の共通言語として整理したガイドです。 本記事では、この NDR Insight の考え方をベースに、 Gatewatcher NDR プラットフォームの総論を CIO/CISO 視点で解説します。
なぜ今「NDR」が重要なのか
1:境界防御の前提が崩れた現在
かつては「社内ネットワーク=安全」「インターネット=危険」という前提で、境界防御を強化することが主な戦略でした。 しかし現在は、クラウド、SaaS、リモートワーク、OT、IoT、サプライチェーンなどが絡み合い、 のっぺりとした「社内ネットワーク」という概念は実質的に消えつつあります。
その結果、
- どこから侵入されるか分からない(VPN・クラウド経由・サードパーティなど)
- どこまでが保護対象ネットワークなのかが曖昧(IT/OT/クラウドが混在)
- EDR やエージェントを入れづらい機器が「盲点」として残る
という構造的な課題が生まれています。 このギャップを埋めるためには、境界や端末に依存せず、 ネットワーク全体の振る舞いを俯瞰して把握する技術が必要になります。 これが NDR が求められる第一の理由です。
2:従来スタックだけでは見えないもの
従来のセキュリティスタック(FW / IDS/IPS / EDR / SIEM)は、今でも重要な役割を担っています。 しかし、NDR Insight では「これらはより単純な時代の設計思想に基づいている」と指摘しています。
- ログ中心の監視では、「今何が起きているか」より「過去に何が起きたか」に偏りがち
- 個々の製品の視野は限定されており、ネットワーク全体の横展開を把握しづらい
- アラートが大量発生し、SOC が「アラート疲弊」に陥る
Gatewatcher NDR プラットフォームは、この課題を 「可視性(Visibility)」「早期検知(Detection)」「迅速対応(Response)」「脅威の先読み(Anticipation)」 の 4つの観点から補完することを目的としています。
Gatewatcher NDRプラットフォームの全体像
1:NDR Insight が示す「4つのアクションピラー」
Gatewatcher の NDR Insight および製品サイトでは、 同社の NDR プラットフォームを支えるコアとして Detect / Analyze / Respond / Anticipate という 4 つのアクションピラーが示されています。
- Detect(検知):
多様な検知エンジンと AI により、ネットワーク全体のトラフィックから既知・未知・隠れた脅威を早期に検知します。 暗号化通信やゼロデイ攻撃を含む複雑な挙動も、メタデータとふるまい分析の組み合わせで可視化します。 - Analyze(分析):
検知イベントをそのままアラートとして投げるのではなく、 脅威インテリジェンス(CTI)や資産情報と突き合わせて、 MITRE ATT&CK にマッピングされた「インシデント」として整理します。 これにより、SOC は限られた工数で本当に重要なケースに集中できます。 - Respond(対応):
自動化エンジン(Reflex など)を通じて、ファイアウォール・EDR・NAC など既存製品へ封じ込めアクションを実行します。 手動/半自動/全自動を組み合わせることで、自社ポリシーに沿った「現実的な自動化」を構築できます。 - Anticipate(予測):
過去のトラフィックデータや CTI を活用し、露出の高い資産や攻撃に悪用されやすい経路を特定します。 さらに、生成 AI(GAIA)などを活用することで、「次にどこが狙われそうか」という観点からのリスク評価と対策立案を支援します。
これら 4 つのピラーは、単に機能カタログを並べるのではなく、 「ネットワークの事実をインシデントの理解に変え、具体的なアクションと将来の改善に結びつける」 一連の流れとして整理されている点が特徴です。
2:CIO・CISO・SOC、それぞれにとっての意味
NDR Insight では、この 4 つのピラーを CIO / CISO / SOC という 3 つの視点にマッピングしています。
- CIO にとって:
ビジネスレジリエンス、IT 環境の可視性、サイバーセキュリティ関連コストの最適化という観点から、 NDR を「投資判断の基準」として位置づけます。 - CISO にとって:
組織全体のセキュリティ姿勢の強化、規制要件への対応、統一された防御体制の構築という課題に対し、 NDR を「ゼロトラストや他ソリューションを補完する中核コンポーネント」として捉えます。 - SOC にとって:
アラート疲弊の軽減、インシデント対応の自動化、調査・レポート作成の効率化という日々の運用課題に対し、 NDR を「ノイズを減らし、判断を支えるプラットフォーム」として評価します。
このように Gatewatcher NDR プラットフォームは、技術面だけでなく、 経営・リスク管理・運用の3層で意味を持つ投資対象として設計されています。
CIO/CISO視点での導入メリット
1:サイバーレジリエンスとビジネス継続性
サイバーレジリエンスとは、「攻撃を完全に防ぐこと」ではなく、 「攻撃を受けても事業を継続し、迅速に復旧できる能力」を指します。 NDR はこのレジリエンスを、次の 3 つの要素で支えます。
- 早期検知:侵入直後や横展開の初期段階で兆候を捉え、被害拡大前に対処できる
- インシデント対応力:自動プレイブックと一貫したワークフローで、属人的な対応を減らす
- 学習と改善:過去のトラフィックとインシデントから学び、将来のリスクを減らすサイクルを作る
Gatewatcher の NDR プラットフォームは、これらを単発のプロジェクトではなく 「継続的な改善プロセス」として回せるようにする点が特徴です。
2:コスト最適化と投資効果の見える化
「これ以上セキュリティ予算を増やせない」という声は多くの組織で聞かれます。 そのなかで NDR 導入を検討する際、CIO/CISO にとって重要なのは、 既存投資との整合性と効果の見える化です。
- 既存の FW / EDR / SIEM / SOAR との連携により、「入れ替え」ではなく「強化」として位置づけられる
- アラート数や調査時間の削減など、運用面の KPI として効果を可視化しやすい
- インシデント発生時の対応時間短縮や被害額抑制を、ビジネスインパクトとして説明しやすい
Gatewatcher のメッセージは一貫して 「昨日までのサイバーセキュリティでは、明日の攻撃には対応できない」 というものです。 NDR を追加することで、既存投資を活かしつつ「明日以降」に備える── それが本プラットフォームの価値の核となります。
導入ステップと検討ポイント(総論)
最後に、Gatewatcher NDR プラットフォームを含めた NDR 導入全般について、 総論レベルのステップと検討ポイントを整理します。
- 1)目的の明確化
「どの課題を優先的に解決したいのか」(例:ランサムウェア対策、SOC 効率化、OT 可視化など)を先に整理します。 この時点で CIO/CISO/SOC の合意形成を図ると、その後の投資判断がスムーズになります。 - 2)可視化の範囲と深さの定義
どのネットワークセグメント・拠点・クラウド環境まで NDR のカバー範囲とするか、 段階的なロードマップとして定義します。 - 3)既存スタックとの統合方針
SIEM や SOAR、EDR、FW 製品との連携シナリオをあらかじめ設計し、 「どのイベントをどこで集約し、どこで自動化するか」を整理します。 - 4)運用モデルの設計
自社 SOC / MSSP / ハイブリッドなど、どの運用モデルで NDR を活用するかを決めます。 Gatewatcher のようなプラットフォームは、MSSP 経由でのサービス化にも適しています。 - 5)効果測定の指標設定
MTTD/MTTR、アラート削減率、調査時間、インシデント件数など、 導入前後で比較できる KPI をあらかじめ決めておくことで、 投資効果を継続的に説明しやすくなります。
これらのステップを踏まえつつ、Gatewatcher の NDR Insight やホワイトペーパー、ユースケース集などを参照することで、 自社に最適な NDR 導入戦略を具体化しやすくなります。
まとめ
本記事では、Gatewatcher の NDR Insight をベースに、 NDR が求められる背景と Gatewatcher NDR プラットフォームの総論を整理しました。
- 境界防御の前提が崩れ、ネットワーク全体の可視性とレジリエンスが重要になっていること
- Gatewatcher NDR が Detect / Analyze / Respond / Anticipate の 4 つのアクションピラーで構成されていること
- CIO/CISO/SOC のそれぞれにとって、NDR が投資・運用・リスク管理の観点から意味を持つこと
- 導入ステップと KPI 設計により、NDR 投資の効果を継続的に可視化できること
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