
PDF開発ツール群「iText Suite」の最新版 9.3 がリリースされました。中核となる iText Core 9.3.0 では、EUの「信頼リスト(Trusted Lists)」を利用した電子署名検証のサポートが追加され、法的に有効な署名の確認が容易になりました。これは欧州の電子署名法 eIDAS に準拠しており、各国の公的認証機関を自動的に参照して信頼性を判断します。さらに、マルチスレッド環境での動作を強化し、スレッドセーフ性が向上しています。
アドオンの主な更新
pdfOCR 4.1.0
従来の Tesseract エンジンに加えて、機械学習ベースの ONNX(Open Neural Network Exchange)モデル対応OCR が導入されました。ONNX はAIモデルの共通フォーマットで、ONNX形式のコミュニティ/ベンダー製OCRモデルを利用可能にします。 また、画像だけでなくスキャン済みPDFファイルを直接入力できるようになり、外部変換を行わずにテキスト抽出が可能です。ONNXベースのOCR ワークフローをサポートするため、.NET環境では、画像処理ライブラリを System.Drawing から SkiaSharp に変更し、Windows以外の環境でも安定して動作するようになりました。
pdfOptimizer 4.1.0
PDF内の重複フォントサブセットを統合する機能を追加。これにより、文書品質を保ちながらファイルサイズを大幅に削減できます。 企業や行政の大量文書処理での効率化が期待されます。
その他のアドオン
- pdfHTML 6.2.1:HTML/CSSテンプレートからのPDF生成で、レイアウトとタグ構造の精度を改善。
- pdfCalligraph 5.0.3:多言語タイポグラフィの描画精度を維持する更新。
- pdfSweep 5.0.3:機密情報のマスキング・削除アドオンに関する互換性更新。
今回リリースのハイライト(3点)
- 電子署名の信頼性検証の自動化(EU Trusted Lists対応)
- AI(ONNX)ベースOCR による認識精度と速度の向上
- PDF最適化 による軽量化と品質維持
まとめ
これらの更新により、iText Suite は従来のPDF生成・編集ツールから一歩進み、電子署名検証・AI OCR・最適化 といった高度なワークフロー統合を実現する包括的なPDF開発基盤へと進化しています。