RabbitHole by CCL Solutions Group:完全ガイド
エグゼクティブサマリー
RabbitHoleは、ヨーロッパを代表するデジタルフォレンジック専門企業の一つであるCCL Solutions Groupが開発した、高度なフォレンジックデータ探索・調査ツールです。CCLのR&D Centre of Excellenceによって開発され、プリンシパルアナリストのAlex Caithnessが率いるこのツールは、商用フォレンジックツールでは処理や表示ができない複雑なデータ形式を深く掘り下げることを可能にします。
このフレーズは、デジタル調査において見逃されがちな、隠されたデータ、埋め込まれたデータ、または削除されたデータを明らかにするという本質的な目的を捉えています。
RabbitHoleができること
主要機能
RabbitHoleは、あらゆる形式のスマートデバイスからのソースファイルを分析するために設計された、ファイル調査・探索ツールです。二つの重要な機能を果たします。
検証ツール
商用フォレンジックツールの出力の正確性と完全性を検証します
調査ソリューション
主流のフォレンジックツールが限界に達する領域において、分析能力を拡張します
革新的な「再解析」コンセプト
RabbitHoleの最も革新的な機能は、再解析です。これは、一つのビューからデータを取得し、単一のインターフェース内でより適切な形式にシームレスに再解釈する能力です。これにより、調査担当者は以下のことが可能になります。
- ファイルを16進数形式で表示
- その16進数ビュー内に埋め込まれたJSONデータを特定
- そのセクションを即座にJSONとして再解析し、読みやすくする
- JSON内のBase64エンコードされた文字列を発見
- それをデコードして画像やデータベースを明らかにする
- RabbitHoleを離れることなく、複数のレイヤーを掘り下げ続ける
バージョン3: 画期的なSQLite削除データ復元
RabbitHole バージョン3(2025年9月リリース)における最も重要な進歩は、統合されたSQLite削除データ復元機能です。
なぜこれが重要なのか
- SQLiteは至る所に存在: デジタルフォレンジックにおいて最も一般的なデータベース形式の一つであり、無数のモバイルアプリ、ブラウザ、システムで使用されています
- 削除データは重要: ユーザーが消去したと考えた証拠が、捜査において最も重要なデータになることがよくあります
- 以前は別のツールが必要: 調査担当者は追加のソフトウェアが必要で、時間、コスト、トレーニング、検証の負担が増えていました
主要なSQLite復元機能
自動再構築
削除されたレコードが機能的なデータベースに再構築され、データが削除されなかったかのように通常のクエリと探索が可能
WALタイムライン
Write-Ahead Logによるデータベース操作のシーケンス表示で、重要なタイミングコンテキストを提供
自己最適化アルゴリズム
高速でインテリジェントな復元と、監査情報を提供
シームレスな統合
削除されたデータがライブデータと同じインターフェースに表示され、ツールの切り替えが不要
— Alex Caithness, 開発者
包括的な形式サポート
RabbitHoleは、デジタルフォレンジックで遭遇する広範なデータ形式をサポートしています。
データベースとストレージ形式
- SQLite(削除レコード復元付き)
- LevelDb(削除レコード復元付き)
- Chromium/Electron IndexedDB(削除レコード復元付き)
- Chromium/Electron Local Storage(削除レコード復元付き)
- Chromium/Electron Session Storage(削除レコード復元付き)
圧縮形式
Base64、Brotli、Deflate、GZip、LZFSE、Mozilla LZ4、Snappy、Zlib
データ構造
Bencode、Flat Buffer、Java Serialization、JSON、MessagePack、Protocol Buffer、XML、Facebook Serialisation
モバイルおよびシステム形式
ABX(Android Binary XML)、バイナリおよびテキストPlist、Windowsレジストリ、PM Records
分析機能
バイナリ難読化解除、エントロピー計算機、エポックタイム変換、ハッシュ計算、16進数ビュー、画像ビュー、URL解析
デジタルフォレンジックにおける主な使用例
1. モバイルデバイス抽出の手動検証
RabbitHoleは、CCLや他の多くの組織におけるモバイルデバイスフォレンジックの主要な検証ツールです。
RabbitHoleによる解決策:
- 分析者は完全なファイルシステム抽出をファイルとフォルダにエクスポート
- ソースファイル(データベース、PList、JSON、XML)を分離
- 形式に関係なくRabbitHoleでファイルを開く
- 分析者は商用ツールの正確性を検証:
- すべてのレコードが存在するか?
- データは正しくデコードされているか?
- 何が見逃されているか?
- 重要なデータが見逃されていた場合、RabbitHoleはそれを適切に報告する手段を提供
2. 商用ツールの限界を超えた調査
RabbitHoleは、主流ツールが限界に達する領域で能力を拡張します。
- あまり知られていないアプリケーション: 犯罪組織は、主要なフォレンジックツールがサポートしていない知名度の低いアプリを使用することがよくあります。RabbitHoleはそのデータ構造を分析できます。
- 独自形式: ユニークなストレージメカニズムを持つカスタムまたは企業アプリ
- 埋め込みデータ: 他のデータ構造内に隠されたデータで、複数のレイヤーに入れ子になっているもの
- 部分的または破損したファイル: RabbitHoleは、破損したファイルからでも有用な情報を抽出できることがよくあります
実例
調査には、カスタムエンコーディングを使用した独自のSQLiteデータベースに会話を保存するメッセージングアプリが関係している場合があります。商用ツールはアプリの存在を確認できますが、メッセージをデコードできません。RabbitHoleを使用すると、分析者は以下のことができます:
- SQLiteデータベースを開く
- テーブル構造を特定
- カスタムタイムスタンプ形式をデコード
- エンコードされたメッセージコンテンツを抽出して再解析
- 削除された会話を復元
- 読みやすいレポートを生成 - すべて一つのツールで完結
3. 劇的な効率改善
RabbitHoleがない場合:
- ファイルを16進数エディタで開き、その種類を特定
- この形式を読めるソフトウェアを調査
- IT部門に新しいソフトウェアのインストール承認を要請(セキュリティ上の理由でしばしば拒否されます)
- 調達とインストールを待つ
- 新しいソフトウェアを学習
- 分析を実行
- 結果をエクスポート
- メインのフォレンジックツールに戻る
- 得られた結果を他の証拠と照合する
4. 内臓フォレンジック機能
RabbitHoleには、通常であれば他のツールを必要とする重要なフォレンジック機能が含まれています。
- タイムスタンプ分析: エポックタイム、Windows FILETIME、WebKitタイムスタンプなど、さまざまなタイムスタンプ形式を自動的に検出して変換
- 暗号化検出: エントロピー分析を通じて暗号化されたデータを特定
- 画像可視化: ビューアで直接、複数の形式で画像をレンダリング
- ハッシュ計算: 証拠の完全性のための暗号ハッシュを生成
- バイナリ分析: インテリジェントな解析提案付きの16進数表示
フォレンジック組織へのメリット
運用効率
- 案件処理量の増加: 分析が高速化することで、同じ期間内により多くの調査を完了可能
- ツールの乱立の削減: 複数の専門的なユーティリティを一つのツールで代替可能
- トレーニングの効率化: 分析者は多くの限定的なツールの代わりに、一つの包括的なツールを学習するだけでよい
- オンボーディングの加速: 統合プラットフォームにより、新しいスタッフがより早く実務に対応できるように
財務上のメリット
- ライセンスコストの削減: 複数の専門ソリューションの代わりに単一のツール購入
- 検証負担の軽減: ISO 17025準拠または内部品質基準のために、一つのツールを検証することは、多くのツールを検証するよりもはるかに安価
- トレーニング費用の削減: 訓練の集約化により、コストとケースワークから離れる時間が削減
品質と法的防御力
ISO 17025と運用
CCL‑Forensics Ltd は、UKAS により ISO 17025の試験所認定を受けており、その認定スコープにはデジタル機器・データの処理/分析において RabbitHole を用いる手順が明記されています(例:Windows/Mac/Linux のデータ処理・分析、モバイルのデータ処理・分析)。なお、ISO 17025 は試験所(業務プロセス)の能力を認定するもので、ソフトウェア自体を認定する制度ではありません。
RabbitHoleの利用者
対象業界
- 法執行機関: モバイルデバイス分析を必要とする刑事捜査
- 政府機関: 詐欺、スパイ活動、セキュリティ侵害の調査
- 軍事・情報機関: 機密性の高い、または秘匿性を要する調査
- 企業セキュリティ: 内部インシデント対応と調査
- 法律部門: 訴訟においてデジタル証拠を扱う法律事務所
- プロフェッショナルサービス: フォレンジック会計および調査会社
- 保険: 保険金請求調査と詐欺検出
- 規制機関: コンプライアンス調査
ユーザープロファイル
- デジタルフォレンジック審査官およびアナリスト
- モバイルフォレンジック専門家
- インシデント対応専門家
- サイバーセキュリティ調査官
- eディスカバリー専門家
- データ復旧エキスパート
技術仕様
システム要件
- オペレーティングシステム: Windows 10以降
- フレームワーク: .NET Framework 4.8
- ハードウェア: 標準的なフォレンジックワークステーション仕様
競争上の優位性
RabbitHole vs. 代替品
データ表示やSQLite復元のための他のツール(SQLite Forensic Toolkit、FQLite、16進数エディタ、Belkasoft Xなど)は存在しますが、RabbitHoleは以下の点で差別化されています。
統一されたワークフロー
ツールの切り替えが調査の流れを妨げません
再解析技術
エクスポートせずにデータをシームレスに再解釈する独自の能力
包括的な形式サポート
単一のツールでは比類のない幅広さ
統合された復元
ライブデータと削除データの分析を統合
コーディング不要
スクリプト知識なしで強力な機能を利用可能
実務者によって構築
実際のニーズを理解する現役のフォレンジックアナリストによって設計
エビデンスの提供
ISO 17025認定の手順と品質管理の下で運用され、チェーン・オブ・カストディを含む適正手続きを徹底。法廷提出に耐える(defensible)エビデンスの提供を支援します。
開発とイノベーション
Centre of Excellence
RabbitHoleは、以下に焦点を当てて開発されています。
- デジタルフォレンジックの手法を発展させること
- 進化する技術への対応
- 新たな犯罪手法への対応
- 実務者のフィードバックの組み込み
継続的な進化
ツールは複数の重要なリリースを経て進歩してきました。
- リリース2.1: Chromium/Electronストレージ(IndexedDB、Local Storage、Session Storage)のリパーサーを追加
- リリース2.2: パフォーマンス向上とインターフェース改善
- リリース2.3: 高度なデータ探索ワークフロー用の「Runs」機能を導入
- バージョン3: 革新的なSQLite削除データ復元統合
実際の影響: なぜ重要なのか
事件における決定的な証拠
CCLのフォレンジック実務者によると、RabbitHoleのようなツールがなければ、事実の結果を左右し、人生を変えかねない証拠が見逃される可能性があります。これは以下の理由で起こります。
- 現代のデバイスはますます複雑なデータ構造を作成
- アプリケーションは独自で難読化されたストレージ形式を使用
- 商用ツールはすべてのアプリと形式をサポートできない
- 削除されたデータには、最も有罪を示す証拠が含まれることが多い
- 手動分析は時間がかかりすぎ、エラーが発生しやすい
司法制度への影響
刑事事件において、有罪判決と無罪判決を分ける決定的な違いは、以下にかかっている場合があります。
- 意図を示す削除されたテキストメッセージ
- 誰かが現場にいたことを示すブラウザ履歴の記録
- アリバイを確立する(または反証する)アプリ使用タイムスタンプ
- あまり知られていないアプリケーションデータベースに隠された財務記録
RabbitHoleは、技術的な制限により、この証拠が見過ごされないようにするのに役立ちます。
RabbitHoleの使い始め方
トライアルと購入
- 30日間の無料トライアルが利用可能
- トライアルにクレジットカードは不要
- サインアップには約2分かかります
- 既存ユーザーは、新しいバージョンがリリースされると無料アップグレードを受け取ります
ライセンスオプション
- 個人実務者ライセンス
- 組織/ラボラトリーライセンス
- ボリューム価格
- 教育機関向け割引
学習リソース
CCLは豊富な教育資料を提供しています。
- ビデオチュートリアル: 機能のデモンストレーションとワークフロー
- ドキュメント: 技術ガイドとベストプラクティス
- サポート: 開発およびサポートチームへの直接アクセス
- コミュニティ: アクティブなユーザーコミュニティとフォーラム
制限と考慮事項
現在の制限
- プラットフォーム: Windowsのみ(MacおよびLinuxはサポートされていません)
- 学習曲線: 直感的な設計にもかかわらず、すべての機能をマスターするには時間がかかります
- 価格の透明性: 公開価格があれば、小規模組織の評価に役立ちます
最適な使用場面
RabbitHoleは以下の場合に特に力を発揮します。
- モバイルデバイス抽出の分析
- 商用フォレンジックツールの出力結果の検証
- 未知または独自のデータ形式の調査
- SQLiteおよび関連データベースからの削除データの復元
- 複雑で、入れ子になった、またはエンコードされたデータ構造の解析
適していない場合
- MacまたはLinuxワークステーションのみを使用する組織
- ファイルレベルのデータ分析を含まない調査
- 商用ツールが完全にカバーを提供するケース
RabbitHoleの未来
CCLのイノベーションの実績に基づき、今後の開発として以下が考えられます。
拡張された形式サポート
アプリケーションとストレージメカニズムの進化に伴う新しいリパーサー
AI統合
自動パターン認識と異常検出
クラウドデータソース
クラウドストレージ分析のための強化された機能
コラボレーション機能
複雑な調査のためのマルチアナリストワークフロー
高度なレポート
法廷手続きのための自動証拠提示
パフォーマンス最適化
ますます大きくなるデータセットを効率的に処理する機能
結論
CCL Solutions GroupによるRabbitHoleは、フォレンジックデータ探索におけるパラダイムシフトを表しています。多様なデータ形式サポート、シームレスな再解析機能、統合された削除データ復元を単一の直感的なプラットフォームに統合することで、RabbitHoleは商用フォレンジックツールが埋めることのできない重要なギャップに対処しています。
このツールは、そのキャッチフレーズである「あなたが見逃しているものを、あなたは知らない」のとおり、他の方法では発見されないままかもしれない、隠された、埋め込まれた、または削除された証拠を明らかにします。
モバイルデバイス、複雑なアプリケーション、または特殊なデータ形式を扱うフォレンジック実務者にとって、RabbitHoleは「他のツールが終わる場所から始まる」不可欠なツールとなっています。
実際のフォレンジック実務に根ざした開発、ユーザーフィードバックを組み込んだ定期的なアップデート、ISO 17025認定業務における実証されたパフォーマンス、法廷での採用実績により、RabbitHoleは現代のデジタルフォレンジック調査のための成熟した、信頼性の高い、革新的なソリューションとして確立されています。
商用ツールの出力を検証する場合でも、あまり知られていないアプリケーションを調査する場合でも、重要な削除されたSQLiteデータを復元する場合でも、単にファイルに実際に何が含まれているかを理解する必要がある場合でも、RabbitHoleは調査担当者にデジタル真実を明らかにするための能力、効率、自信を提供します。
包括的なデジタルフォレンジック能力を重視する組織にとって、RabbitHoleはコストを削減し、調査を加速し、最も重要なことに、技術的な制限により重要な証拠が見逃されないことを保証する戦略的投資を表しています。