
iTextは2024年にバージョン9.0をリリースし、今回は創立25周年を記念した特別なバージョン9.1を発表しました。今回のリリースでは、SVG処理の強化(テキスト位置、フォント、相対サイズ属性の対応など)や、大規模テーブル生成時のパフォーマンス向上が実現され、PDF/A・PDF/UA対応がさらに向上。また、pdfHTMLアドオンも恩恵を受け、GraalVM Native Imageのサポート範囲に含まれるようになりました。これはクラウドやコンテナ環境での高速・軽量なPDF生成に有効です。さらに多くのアドオンや機能改善が含まれており、見逃せない内容です。
テーブル性能の向上
iText開発チームは、PDF内で直接テーブルを作成できるというiTextの強みをさらに高めるため、性能向上に取り組んできました。PDF仕様の進化により、見出しや段落などの構造的タグ付けが可能となり、テーブルも行・列・セルなどとして認識できるようになりました。iTextではタグ付けを有効にするだけで自動的に必要なタグが生成されます。iText 7ではセルの余白計算がより正確になり、開発者の負担が軽減された一方で、処理が複雑化しレンダリングが遅くなっていました。ですが、iText Core 9.1.0ではタグ付きテーブルのレンダリング速度が大幅に向上し、作成時間が大きく短縮されています。
SVG対応の拡張
iTextは2018年にSVGサポートを導入し、以来多くの改善が行われてきました。今回のリリースではSVG対応が大幅に進化しました。新たに追加された機能には、テキストのクリッピングパス、marker-midプロパティ、テキスト装飾、マーカーの継承などがあります。また、フォント処理や相対サイズ属性、テキスト位置、ストローク不透明度、破線パターンへの対応が強化されました。さらに、CSS特有のSVG対応が改善され、@importurl()ルールによる外部リソースの参照も可能になりました。
加えて、iText Core用のpdfCalligraphアドオンにより、SVGモジュールでの高度なタイポグラフィ機能の活用も向上しました。これにより、iText、SVG、少しのCSSで実現できる新しい表現が可能となりました。
デジタル署名機能の強化
iTextは、デジタル署名と検証機能の強化を継続中です。前回追加されたMAC整合性保護は、今回新たに二段階署名にも対応しました。また、Cloud Signing Consortium(CSC)APIを使った署名のコードサンプルも追加され、リリースノートにリンクがあります。さらに、basicConstraints 拡張で pathLength パラメータが0に設定された証明書に対する従来の回避策は不要になり、署名および検証全体の改善も行われています。
その他、アドオン等の新バージョンもリリースされています。詳細は下記をご確認ください。